スペシャルインタビュー

アスリートNEXTキャリア

アスリートの第二の人生を
輝かせるために

日本における雇用情勢を踏まえた新たな人材サービスの展開について、元サッカー日本代表で現在は解説者としてご活躍中の城彰二様、ソニーコンスーマーセールス株式会社で代表取締役を務められた辻 和利様を当社にお迎えしてお話を伺いました。(以下、敬省略)

写真右:元サッカー日本代表 城彰二様
写真左:元ソニーコンスーマーセールス株式会社 代表取締役 辻和利様
写真中央:MAYA STAFFING社長 冨留田康弘

元日本代表が見てきたアスリートたちの引退後

司会:早速ですが、2019年1月の有効求人倍率が1.63倍、2018年平均でも前年比0.11ポイント上昇の1.15倍と1973年(1.76倍)に迫る高水準に達して人手不足感はますます高まっている状況です。MAYA STAFFINGとしてはどのような課題を見据え、それに対してどのような事業展開をお考えでしょうか?

冨留田:当社は一般的な人材派遣にとどまらず、コールセンターや営業代行などのBPOサービスを高い水準で提供しており、ご依頼を基に遂行、効率化、合理化という手段をもってご依頼主様の利益最大化に寄与できるという強みがあります。しかしご依頼が殺到する一方で、同業他社に同じく、派遣労働者や転職希望者の供給はその需要に追い付いていない状況があり、当社が他を差し置くには戦略的差別化が急務と考えております。

また人材紹介サービスにおいては、紹介した人材が入社早々に退職してしまうという事象が若年層の人材を中心に増えており、求人企業様を含めた業界全体の共通課題として、一手を講じる必要があると考えております。

司会:人材争奪戦における差別化と若年層人材の定着率アップが課題ということですね。

冨留田:はい。そこで当社はこの二つの課題を同時に解決すべく、サッカー元日本代表の城さんにもご参画いただき、スポーツ業界を巻き込んだ新たな人材サービスを展開することにしました。それはサッカーを中心としたアスリート人材とコミットし、求人企業様にご紹介するという内容です。この事業を通じて、アスリート人材のNEXTキャリアを支援していきたいと考えております。

司会:サッカー一筋の城さんが人材ビジネスに関与されるということは、アスリートにとってもサッカー業界にとってもメリットがあるということでしょうか?

城:はい。サッカー業界にとっても、非常にメリットが大きい事業だと感じています。私は18歳でサッカー選手になりましたが、実はプロになったと同時に、NEXTキャリアへの備えとして株式会社を立ち上げていました。というのも、サッカー業界ではプロ契約をしたとしても、引退後のキャリア保証がないのが現状だからです。解雇された場合、次の契約先が見つからなければすぐ路頭に迷ってしまう。そんな現実を何度も目の当たりにし、明日は我が身だなと思いながらも、私の場合は13年間プロ生活を続けてこられました。

このサッカー業界を取り巻く現状はどうにか変えていく必要があるのではないか。そんなことを考えていた時、冨留田社長からこの事業のお話をいただいたのです。アスリートが現役を退いた後のキャリアというのは、サッカー業界のみならずスポーツ業界全体の課題でもあると思うので、将来的にはサッカー以外のアスリートにも範囲を広げてこの事業を展開できればと考えています。

自分の「型」を持ったアスリートたちの強みを引き出す

司会:辻さん、人材受け入れ側の企業から見たアスリート人材の魅力をお聞かせいただけますか? また、ソニー時代は人材育成にも注力されたとのことですが、体育会出身の社員とそうでない社員とは、資質や成長面で何か違いはありましたか?

辻:私は営業部門を担当していましたので、採用についてはアスリートに大変注目し、期待もしていました。採用する側から見たアスリートの魅力はいろいろ挙げられますが、私が特に注目していたのは「目標意識の高さ」と「目標達成に取り組む姿勢」、「対人関係の強さ」、「忍耐力」でした。

アスリートの「勝ちに対するこだわりの強さ」や、強化ポイントを「分析」して「作戦を立てる」、「チームワークを磨く」というように試合に向けて準備する様は、企業において営業の目標達成に必要なことと共通しています。特に、達成に対する執念や強い気持ちというのは教えて身に着くものではないので、学生時代に鍛錬されているのは大変貴重です。

対人関係についても、営業は、お客様や上司などから教えていただいたり、彼らを説得したりということが頻繁にあり、縦の人間関係が大きな軸になります。運動部で先輩やOBなどパワフルな対人関係で揉まれて鍛えられていることは非常に魅力ですね。

感覚的な例えですが、得意先の店長さんから「食い下がるガッツ」を気に入られてかわいがられるという取りつきから、営業提案の「馬力」が評価され信頼を勝ち取るというのが、いかにもアスリート的な成功のパターンだったりします。特に若い時は、熱意を見られていることが多いので、そういうところはアスリート出身者の強みだと思います。

司会:城さん、サッカーを通じて培われる能力はビジネスの世界でも生かせるものがありそうですね。

城:目標達成に対する「貪欲さ」や「戦略を立てる力」、戦術を理解するうえでの「判断力」「洞察力」「チームワーク」など、ビジネスで発揮できる強みはたくさんあると思います。サッカーでもビジネスでも、達成感を味わいたいという気持ちが原動力になっていたりするのですよね。

冨留田:当社でも、結果を追い求め続ける「精神力の強さ」や、「高い集中力」は非常に重視しています。また、アスリート時代にキャプテンや主将を務めていた場合、その経験がビジネスにおいての「マネジメント能力」に直結すると思います。「スポーツと仕事は共通する部分があるな」と本人が気づければ、そこからさらに大きく成長していくのではないでしょうか。

辻:そうですね。さらに、戦術的な「状況分析力」も優れていると感じます。ビジネスの状況で誰を説得し攻略すべきか、相手の狙いは何か、自分の勝ちパターンにどう持ち込むか、というようなゲーム的な思考回路を、アスリートは潜在的に持ち合わせている。これは、交渉など相手のあるビジネスの現場では非常に有効です。

また、意味の広い言葉になってしまいますが、「ヒューマンスキル」も挙げたいと思います。関連する人を引き寄せる「巻き込み力」、社内で上手く折り合いをつける「調整力」など、運動部での経験はビジネスの現場でも大いに役に立ちますね。

司会:城さん、そのようなスキルをお持ちの元アスリートの方が、実際に一般企業で活躍されているケースはありますか?

城:たくさんありますよ。販売店に勤めて販売成績で全国1位を獲得した方もいますし、スポーツ販売店の社員として徐々に実績を積み上げた結果、今では自分でスポーツショップを経営している方もいます。なかには、人材育成の企業を立ち上げて、Jリーグのスポンサーを務めている方なんかもいますね。

ただ、そういった方々と話をしていて感じるのが、「サッカーを続けたかった」という気持ちを断ち切ることの難しさと大切さ。今までプロとして活躍してきた選手はどうしてもその気持ちを引きずってしまい、大きな喪失感に苛まれてしまうことも多いのです。しかし、そこでしっかりと気持ちを整理して前向きに努力をすれば、第二の人生で輝くこともできるのです。引退後の人生の方が長いわけですからね。自分のライフプランをどのように構築し、どう実現するのかをきちんと考えていくことが必要だと思います。

プロの世界でトップにまで上り詰められるのはほんの一握りであり、世の中にはトップになれなかったアスリートの方が多い。ただ、プロの世界ではトップになれなくてもNEXTキャリアで花開き、トップだった方を超えられる可能性もあります。アスリートは、それを叶えるだけの大きな力を持っていると思います。

NEXTキャリアを支えるマッチング後のサポート体制

司会:NEXTキャリアを前向きに捉えることで、より一層の活躍ができるのですね。辻さん、スポーツで培った能力は企業側から見ても非常に魅力的なものが多いかと思いますが、アスリートに向いている業界や職種はありますか?

辻:やはり営業職が一番イメージしやすいですね。しかし、先ほど挙げたアスリートの強みや魅力はどれも本質的なものですから、活躍できる場は限定的ではないと思います。

ソニー時代には、例えば人事部門でもCS部門でも、この方はアスリートだな、強いなと思う人に出会っています。そういう方に共通するのは、仕事のやり方にしっかりと自分の「軸・型」を持っているということです。アスリートとして、勝ったり負けたり怪我をしたり何度もピンチを乗り越えて勝負する、そういう自分の「型」を自覚してビジネスの場でも応用し、目標達成に向かって努力を継続できる方が、ビジネスでも成長できる方だと思いますね。

城:アスリートは、さまざまな可能性を秘めていますよね。本人の考え方や性格に合う場所が見つかれば、能力はさらに磨かれていくと思います。販売でも営業でも、もちろんそれ以外の職種でも。そういえば、冨留田社長も販売職を経験されていましたよね?

冨留田:はい。実は私も学生時代サッカーに打ち込んでおりました。城さんのように選手権に出るところまではいけませんでしたが、学生時代にスポーツで培ってきた「高みを目指したい」という志は、ビジネスにおいても持ち続けています。販売職時代は「個人成績でトップになりたい」という気持ちで挑み、何度か達成することができました。

城:そこから、現在では経営者としてご活躍されているわけですから、凄いことですよね。ちなみに、企業から見るアスリート人材の弱みや改善点はどのようなポイントになるのでしょうか?

辻:表現すること自体に慣れていないアスリートの場合は、相手に伝えたいという「思い」だけが先行してしまうケースもあるかもしれません。話に説得力を持たせるための言葉選びなどの部分ですね。

城:なるほど。アスリートは限られたコミュニティー内で活動していることが多いので、独自の決まり事以外について学ぶ機会があまりありません。社会や企業で求められる基本マナーや話し方などを身につけられていない。そのため、いざ社会に出ると、まずはそこで大きな壁にぶつかってしまう傾向があると思います。なかなか社会に適応できないのですよね。

私も31歳で現役生活を終え、社会人になったばかりの頃はとても苦労しました。引退後すぐにアナウンス学校へ通い、あいさつの仕方から発声法まで勉強させてもらいました。

冨留田:城さんの場合、社会に適応してきたかなという手応えを感じたのはいつ頃でしたか?

城:社会人1年目ですね。いろいろな物事を吸収しながら、徐々に新しい仕事を楽しめるようになっていきました。ただ、2年目を迎える頃には「さらなる高みを目指すためにはどのように仕事を進めていくべきか?」という新たな壁にぶつかりましたね。「NEXTキャリア」、いわば新しい世界に踏み出したばかりのアスリートにとって、このような壁をたった一人で乗り越えていくのは非常に大変です。

だからこそ今回の事業では、アスリート人材が社会人としてスタートを切った後のサポートを重視しています。困難な状況に陥った際に誰の手助けも得られない環境だと、早期退職にもつながりやすいと思います。企業とアスリート人材をマッチングする会社はたくさんありますが、マッチングだけで終わらせてしまっては意味がない。アスリート人材の支援をするのであれば、サポート体制の充実も必要不可欠だと考えています。

冨留田:サポート体制が、まさに当社のアスリート人材紹介における大きな強みですね。冒頭で申し上げたとおり、当社では大規模なBPOプロジェクトが稼働しておりますので、マッチング不成立の場合には当社のプロジェクト現場で一定期間OJT方式の研修を施してから、改めて企業様へご紹介します。つまり、アスリート人材は適した就職先が見つかるまでの期間を利用して、当社で社会人経験を積めるのです。さらに、各種検定・資格の取得も全面的に支援します。

この育成プログラムは、企業様にとっては中途採用者の研修負担が緩和され、アスリートにとっても本番前に基礎的なビジネススキルと自信をつけられるため、どちらにとっても大きなメリットがあります。また、当社のプロジェクト現場において、さまざまな実務を経験することで職種の適正を見極められるため、入社後のミスマッチ防止にもつながります。なお、就職後も半年ほど経過したタイミングで同期会のようなものを当社で開催して、そこで各々の悩みを共有してもらい、適切なアドバイスができればと考えています。

城:同期会などの交流の場があると、本人も安心ですよね。また、MAYA STAFFINGが企業と人材の間に立つことで、企業のニーズを人材へ、より明確に落とし込めるのも非常に大きなメリットだと思います。

元日本代表が見てきたアスリートたちの引退後

司会:今回の新事業に関して、各業界からの反響はいかがですか?

冨留田:メーカーをはじめ、小売業、物流業、生活関連サービス、外食、保険、不動産など、幅広い業界から関心をいただいております。採用枠は大きくいただけたので、現在は人材の確保に向けて積極的に動き出している段階です。ここからは慎重に企業様や人材へのヒアリングを重ねていきながら、的確なマッチングを実現していかなければと考えています。

城:最初は、プロ人材に特化した事業展開を想定していました。しかし冨留田社長と話し合いを重ねた結果、プロだけではなく学生もスポーツに一生懸命打ち込んできた「アスリート」として支援するという方向に定まりました。学生アスリートは学業に加え練習や試合など時間的な制約もあり、世の中の職業事情に関する知識が乏しく、かつ適切な職業選択ができる環境が整っていないケースが多い現状です。そこを、しっかりとサポートしていきたいと考えています。

そこで全国の学校にコンタクトを取り始めたところ、先生方もこの事業にかける思いについて深く共感してくださいました。今後は、学校での事業説明会なども予定しています。

冨留田:スポーツをする子供を持つ親御さんは、子供の将来への懸念から、このままスポーツを続けさせるべきかどうか、迷われる時期もあると思います。しかし、当社のような支援を行う企業が今後世の中に増えていけば、スポーツを続けさせることへの不安は払拭され、子供の可能性を信じて全面的なバックアップを続けられます。すると、日本のスポーツ業界はさらに盛り上がるのではないでしょうか。日本のスポーツ業界の宝を守りたい。この事業には、そんな思いも込められているのです。

司会:人材と求人企業の双方にメリットが大きいだけではなく、日本のスポーツ業界のさらなる発展も期待できる仕組みなのですね。最後に、この新たなアスリート人材紹介サービスについて抱負などをお聞かせください。

冨留田:当社としては、アスリートがより幅広く活躍できる社会づくりに貢献したいと考えております。プロ選手や、スポーツに打ち込んできた学生たちが就職活動に動き出すタイミングで「まずはMAYA STAFFINGのアスリートNEXTキャリアの門を叩いてみよう」となる風潮を作り出していきたいですね。

城:企業とアスリート人材をつなぎながら、人材の育成まで手掛ける。このような事業を、今後世の中に広く浸透させていきたいですね。こういった新たな取り組みは、まずはどこかが始めることが大切だと思います。

先ほども申し上げたとおり、私自身も現役引退後に社会へ適応していく難しさは体験しています。私がテレビでサッカーの解説をしているのを見て「過去の功績があるから活躍できていいな」とおっしゃる方もいますが、そんなことはないのです。常に自分の力を磨き続けていかないと契約は切られてしまいますし、現実は厳しい。どんな人でも、夢ではなく現実に向き合ってライフプランを立て、努力を続けることが大事なのです。

現実にきちんと向き合えれば、プロ時代に活躍できなかった方も試合になかなか出られなかった学生たちも、前向きにNEXTキャリアを築くことができ、今まで以上に輝けるはずです。そのために必要なサポートを、全力でしていこうと考えています。

司会:企業としても、このようなサービスを活用して人手不足と採用のミスマッチという課題をクリアできれば、経営効率も向上するのではないでしょうか?

辻:大変期待したいサービスだと思います。アスリートのなかには、競技生活を重視するあまり就職活動については準備不足であったり、面接の場でふさわしい表現がなかなかできなかったりする学生も多いと感じていました。その人がアスリートとして鍛えた資質をもっと明確に提示できれば、企業としても適材適所を判断しやすくなります。すると就職のチャンスも増えますし、効率も上がると思います。

人材を見極めるための期間を設けられるという点も魅力ですね。前職では面接の際、例えば表現力が足りていない学生がいた場合にはそこで不採用にするのではなく、面接官同士で情報共有をして、次の面接でその学生の長所を確認するように心掛けていました。つまり、落とすための面接ではなく、適正を見極めて採用するための面接です。一見効率が悪く思われがちですが、このような面接を重ねていくと学生と接する期間が長くなりお互いを深く理解できるため、入社後のミスマッチのリスクが減らせるのです。

このサービスは、まさにこの面接手法と共通するところがあるように感じます。育成プログラムという見極め期間をきちんと設けることで、埋もれがちな人材をピックアップできる。これは、企業、アスリート双方にとって非常にメリットが大きいのではと感じています。

司会:本日は素敵なお話をありがとうございました。