コラム

派遣社員の健康診断は義務なのか|受けられる条件や費用を解説

企業で働いていると、定期的に健康診断を受ける機会があります。正社員の場合、健診機関の医師や看護師が企業にやって来て採血やレントゲン車による健康診断を実施したり、社員が指定の病院や健診センターに出向いて受けたりするのが一般的です。

それでは、派遣社員は正社員と同じように、健康診断を受けることができるのでしょうか。受ける際の条件や費用なども含めて紹介します。

 

派遣社員の受診義務

派遣社員で働く場合、必ず健康診断を受けなければならないのでしょうか。
ここでは、労働関連の法律で、健康診断の受診義務がどのように定められているのかを確認します。

 

派遣会社に義務がある

派遣社員は、派遣元である派遣会社と雇用契約を結んでいます。法律で、企業は雇用契約を結んだ労働者に定期的な健康診断を受けされる義務があるため、原則として派遣社員も健康診断を受けることが可能です。正社員か派遣社員かに関わらず健康診断を受けさせなければならないのは、労働安全衛生法という法律によって定められているからです。

労働安全衛生法とは、雇用する労働者の安全と健康を守る義務を企業が負うことで、職場での事故や災害を防ぐといった目的があります。健康診断で労働者の健康状態を管理したり、病気を早期発見したりするのは、安全に職場全体が業務を進めるうえでとても大切なことです。

労働安全衛生法で、正社員のような「常時使用する労働者」に対し、企業は雇用時と、1年以内ごとに定期的に健康診断を行わなければならない義務があります。もしこうした健康診断を怠った場合は50万円以下の罰金処分も盛り込まれています。

具体的に派遣会社が行うことは次のようなものがあります。

・健康診断個人票を派遣社員ごとに作成する
・健康診断の結果を派遣社員に通知する
・異常所見があった派遣社員の診断について医師の意見を参考に派遣先企業と相談して働きやすい環境を作る

なお、派遣先の職場環境によってさらに手厚い健康診断が必要なケースがあります。化学物質を取り扱っていたり、有害物質が発生したりする環境や、気温や湿度で厳しい環境で働く派遣社員に対しては1年ではなく6ヶ月以内ごとに健康診断を受けさせなければいけません。

また、給食スタッフとして働く派遣社員は雇用時や配置換えの際、検便をはじめ一般社員よりさらに細かい健康診断が求められます。

 

健康診断を受けられる条件

正社員は健康診断が当たり前となっていますが、派遣社員の場合、派遣会社によって健康診断を受けられる条件が異なります。派遣社員についても労働安全衛生法に従って健康診断を受けされる義務はあるものの、勤務年数や勤務時間によって受けられない場合もあるので要注意です。

たとえば、派遣会社に登録後、派遣先企業で6ヶ月以上働いた場合に健康診断が受けられる会社もあれば、継続して1年以上の勤務が条件になっている会社もあります。また、雇用期間を満たしていても、週に30時間以上勤務している場合だけ受けられる場合もあるなど、派遣会社によって細かくルールが分かれているのが実情です。

 

健康診断で必要な受診内容

ここからは、派遣会社が行う健康診断で、具体的にどのような診察や検査が行われるのかについて紹介します。

 

雇い入れ時健康診断

雇い入れ時の健康診断の内容は労働安全規則第43条で次のように定められています。

・これまでの持病の有無など既往歴の聞き取りや業務歴を確認する
・健康状態で本人から自覚症状を聞いたり、診察で他覚症状がないかを確認したりする
・身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査をする
・胸部エックス線検査をする
・血圧測定をする
・貧血検査をする
・採血検査をする
肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)/血中脂質検査(LDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライド)/血糖検査
・尿検査(糖・蛋白)をする
・心電図検査をする

このように基礎的な身体の状態を図るために必要な血液検査や尿検査・心電図・胸部レントゲンを組み合わせて実施されます。

 

定期健康診断

1年以内ごとに行われる定期健康診断は安全規則第44条で次のように内容が決まっています。

・これまでの持病の有無など既往歴の聞き取りや業務歴を確認する
・健康状態で本人から自覚症状を聞いたり、診察で他覚症状がないかを確認したりする
・身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査をする
・胸部エックス線検査をする
・喀痰検査をする
・血圧測定をする
・貧血検査をする
・採血検査をする
肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)/血中脂質検査(LDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライド)/血糖検査
・尿検査(糖・蛋白)をする
・心電図検査をする

雇い入れ時の健康診断との違いは、喀痰(かくたん)検査が追加されていることです。喀痰検査とは痰を顕微鏡で観察して、主に肺がんかどうかを調べる検査です。

ちなみに、定期健康診断では医師が必要でないと認めた場合、次の項目が省略できます。

・身長測定(20歳以上)
・聴力検査(35歳と40歳を除く45歳未満)
・喀痰検査(胸部エックス線検査で病気のおそれがないと診断された場合)
・胸部エックス線検査(40歳未満で一定条件に当てはまる場合)
・心電図検査・貧血検査や採血検査の一部(35歳未満または36歳以上40歳未満)
・腹囲測定(40歳未満やBMI数値に応じて)

 

特定業務健診

深夜の勤務帯で働く労働者や、労働安全衛生法で定める特定業務で働いている社員は配置替え時と6ヶ月以内ごとに定期健康診断と同じ内容を受診する必要があります。なお、胸部エックス線検査のみ1年以内ごとの定期検診のみで構いません。

特定業務健診の対象となるのは次の業務です。

・高熱物体を取り扱う、かつ、非常に暑い場所での業務
・低温物体を取り扱う、かつ、非常に寒冷な場所での業務
・ラジウム放射線やX線のほか有害な放射線にさらされる業務
・土石や獣毛、じんあい、粉末がたくさん飛散する場所での業務
・異常気圧下での業務
・さく岩機や鋲打機などを使用するため、身体に激しい振動がある業務
・非常に重たい物を取り扱う業務
・ボイラー製造など非常に大きな騒音を発する環境での業務
・炭鉱など坑内での業務
・深夜業を含む業務
・水銀や砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸や、こうした有害物に準ずる物質を取り扱う業務
・鉛や水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務
・病原体による汚染の可能性が非常に高い業務
・以上のほかに、厚生労働大臣が定めた業務

 

海外派遣者健診

海外で6ヶ月以上働く派遣社員は、派遣する前と帰国後に次のような健康診断を受けなければなりません。

・これまでの持病の有無など既往歴の聞き取りや業務歴を確認する
・健康状態で本人から自覚症状を聞き取り、診察で他覚症状がないかを確認する
・身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査をする
・胸部エックス線検査をする
・喀痰検査をする
・血圧測定をする
・貧血検査をする
・採血検査をする
肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)/血中脂質検査(LDLコレステロール・HDLコレステロール・血清トリグリセライド)/血糖検査
・尿検査(糖・蛋白)をする
・心電図検査をする

以下の項目は医師が必要であると認めた場合に行われます。

・腹部画像検査(胃部エックス線検査・腹部超音波検査)
・血中尿酸量の検査
・B型肝炎ウイルスの抗体検査
・血液型検査(派遣前のみ)
・糞便塗抹検査(帰国時のみ)

また、医師が必要でないと認めた場合には、次の項目が海外派遣者健診から省くことが可能です。

・身長測定(20歳以上)
・聴力検査(35歳と40歳を除く45歳未満)
・喀痰検査(胸部エックス線検査で病気のおそれがないと診断された場合)
・胸部エックス線検査(40歳未満で一定条件に当てはまる場合)
・心電図検査・貧血検査や採血検査の一部(35歳未満または36歳以上40歳未満)
・腹囲測定(40歳未満やBMI数値による)

 

健康診断に関する費用

それでは派遣会社が行う健康診断の費用は誰がどのくらい負担するのでしょうか。

 

健診料金の負担

健康診断の受診費用は派遣会社の福利厚生によって、負担額が異なります。全額、派遣会社が負担する場合、負担上限が決められている場合など、さまざまです。また、勤務年数が基準に達していないと負担が受けられない派遣会社もあります。

 

自己負担の場合の相場

基本的に派遣会社が全額負担するのが一般的です。自己負担が発生するのは、派遣会社が指定する受診内容以外に検査をした場合で、数百円から数千円など、検査内容によって費用は異なります。

また、派遣会社が設定した健康診断の日程以外に受けた場合も、数千円程度の自己負担が掛かることもあります。

 

健康診断の間の時給

健康診断を受診している時間は勤務時間には当たらないため、時給は発生しません。時給で働く派遣社員の場合、健康診断を休日や有給休暇にすると収入に影響がないのでおすすめです。

 

健康診断を受けないことはできるのか

「時間を取られるから」「病院まで出向くのが面倒」など、健康診断を受けたくない派遣社員もいます。法律や派遣会社との関係で健康診断を省略することはできるのでしょうか。

 

法律による罰則はなし

派遣社員本人の意思で健康診断を受診しなくても、法律によって罰せられる心配はありません。健康診断は、あくまで事業者が労働者に受けさせる義務を定めているものだからです。

 

企業の規則によっては解雇も

ただ、派遣会社によっては安全に派遣先で働いてもらえないリスクがあるといった理由から、最悪の場合解雇されることもあります。

職場の健康診断は、単に労働者本人の健康管理や病気予防・発見に役立つのに加えて、職場の業務を安全に遂行させるために実施されるものです。よほどの事情がない限り、派遣会社の指定する日程で健康診断を受けるようにしましょう。

 

まとめ

派遣会社には雇用契約を結んでいる派遣社員に一定の条件で健康診断を受けさせる義務があります。労働関連の法律で決められているため、どの程度の勤務年数や勤務時間をクリアすれば良いのか、派遣登録時に確認しておきましょう。また、毎年の健康診断は安全に働くためにも、積極的に受診することが大切です。

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